頚椎症性神経根症・脊髄症の理学療法で知っておくべきこと part1/2 ~病態、予後など~

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頚椎症性神経根症・脊髄症の理学療法で知っておくべき病態、予後予測などについてまとめました!

 

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頚椎症性神経根症・脊髄症の病態

椎間板の退行変性により、

  • 椎間腔や椎間関節の狭小化
  • 椎体の骨硬貨、骨棘形成

が生じて

  • 疼痛
  • 頸椎のROM制限

などの症状を呈した状態を変形性頚椎症(好発部位はC3/4、C4/5)といいます。

さらに変形が進行すると神経根や脊髄が圧迫されます。
こうして神経根症を合併したものを頚椎症性神経根症、脊髄症を合併したものを頚椎症性脊髄症といいます。

また、椎体外側部の骨棘によって椎骨動脈が圧迫されると椎骨動脈不全症候群が生じます。

頚椎症性神経根症・脊髄症の症状

  • 頸部~肩甲帯の疼痛
  • 頸部のROM制限
  • 神経根症状(上肢のしびれ、放散痛、感覚障害、運動麻痺)
  • 脊髄症状(痙性麻痺、膀胱直腸障害)

頚椎症性神経根症・脊髄症の治療

保存療法

  • 安静(頸椎カラーの装着)
  • 投薬(消炎鎮痛剤、ブロック療法)
  • 頸椎牽引

軽症例の神経根症や脊髄症はこれらによって頸椎の滑りや不安定性、動的狭窄が改善するので軽快することが多いです。

手術療法

保存療法が効かなかったり、進行性の麻痺、強い疼痛がある場合に手術療法が適応になります。

とくに、脊髄症の場合は神経障害が重度になる前に手術されます。

神経圧迫を除去するために↓の手術が行われます。

  • 前方除圧固定術
  • 後方除圧術
  • 脊柱拡大術(椎弓形成術)

頸椎除圧術後に新たにC5領域を中心とした麻痺が5~30%の確率で生じることがあります。

前方除圧固定術

は1~2椎体間の限局性病変に適応されます。
この手術は前方から椎間板や骨棘を切除し、移植骨による椎体間固定が行われます。

脊髄圧迫因子を除去できる根治手術ですが↓のデメリットがあります。

  • 移植骨の脱転
  • 偽関節
  • 固定した隣接椎間関節の病変出現
  • 反回神経麻痺
  • 食道瘻

 

後方除圧術

椎間孔拡大術で神経根を圧迫する椎体外側部の骨棘を除去します。

脊柱拡大術(椎弓形成術)
3椎体間以上や発育性脊柱管症狭窄を伴う症例に適応されます。

この手術には↓のメリットがあります。

  • 脊髄の広範囲の除圧
  • 脊髄に対する骨性保護
  • 脊柱後方支持要素の温存

しかし、頸椎後方伸展筋群を弱くするため術後に頸部痛をきたしやすいというデメリットがあります。

 

頚椎症性神経根症・脊髄症の予後予測

神経根症

自然経過については↓のように報告されています。

約60~90%が自然軽快し、不変は約25~30%、悪化は数%から約10%存在する(レベルC)。

椎間板ヘルニアに起因する神経根症では、ヘルニアが自然吸収され神経根症の自然治癒にいたる例が多数報告されている(レベルC)。

乾, 下川・他: 頚椎症性神経根症(椎間板ヘルニア含む)の外科治療に関する指針: 脊髄外科 29(3), 242-251, 2015. 


頚髄症

上肢筋力低下と回復時期について

頸椎椎弓形成術(LP)を施行した頚椎症性頚髄症(CSM)患者288例(男性174名、女性114名、平均年齢64.6歳)

上肢筋力低下の発生数、部位、時期、筋力回復時期を調査

【結果】

発生率…13.5%

発生部位…三角筋25例、上腕二頭筋8例、上腕三頭筋13例、手関節伸筋群1例、指関節伸筋群4例

発生時期…全例3週以内

筋力回復時期…1ヶ月以内では21例53.8%、2ヶ月以内では6例15.4%、数ヶ月経過後では8例20.5%あり、平均3.5ヶ月で回復した.

澄川, 中井・他: 頚椎椎弓形成術術後の上肢筋力低下に対するリハビリテーション: 理学療法学Supplement 2009(0), C3O2134-C3O2134, 2010. 

と報告されています。

術後の予後に影響を与えている術前因子について

初回手術 を行った251例 を対象とした.

年齢、性別、罹病期間、脊柱管前後径、日整会判定基準(6項目) を変量 とし術後経過中最も改善した時点の日整会点数を外的基準として多変量解析を行った.

予後に影響を与えているのは、重み順に罹病期間・下肢運動機能・体幹知覚・脊柱管前後径・膀胱障害・上肢運動機能・年令であった.

貴船, 河合・他: 頚椎症性脊髄症の術後成績について 術前所見より予後を知る試み 多変量解析を利用して: 整形外科と災害外科 37(3), 1109-1111, 1989. 

という報告があります。

ガイドラインでは

【自然経過例】
75%が外傷などで症状が悪化,20%が徐々に悪化,5%が急速な悪化で,未治療で改善することはまずない.

【保存的治療例】
151例の平均7.5年の調査で改善21%,不変23%,悪化9%,悪化のため手術48%とした報告がいる.

【手術療法】
成績は前方法,後方法で差はなく,さらに後方法の術式別においても成績に差はないとされている.

予後の予測では術前の症状が重症であるほど(JOAスコアが8点以下)予後が悪い.また術前のMRIで脊髄の圧迫が高度であれば(C2/3レベルと比較して28%以下)予後が悪い.

手術の後療法で予後が変わることはないが,頚椎カラーの装着期間を短縮することで頚椎の可動域は改善する. 

田中, 杉本・他: 頚椎症性脊髄症の診療ガイドライン: 岡山医学会雑誌
2010年122巻1号67-71.  

といわれています。

C5麻痺

C5麻痺は数か月で自然回復するといわれていますが、回復が遅延する症例もあります。
回復遅延に影響する項目として

(1)頸椎後縦靱帯骨化症もしくは歩行障害(頸椎機能判定基準の下肢の項目が1.5点以下)を有している
(2)術前の肩・肘関節のMMTが3以下
(3)術前の自覚症状発生から手術までの期間が1年以上
(4)C5麻痺が術後翌日に発生している
(5)麻痺発生時の麻痺筋のMMTが1もしくは0

C5麻痺患者のうち算定上限日数以上もしくはMMT3以上に至るまで経過を追えた症例は、13例中7例であった。

7例中5例が予後良好、2例が予後不良であった。

予後良好であった5例のうち4例は、回復遅延項目に該当せず3ヶ月以内にMMT4以上に回復した。
残りの1例は2項目に該当し、麻痺発生から5ヵ月後にMMT3に至った。

予後不良であった2例は3~4項目に該当し、算定上限日数を超過してもMMT3以上に至らなかった。

出原, 石原・他: 頸椎除圧術後に発生するC5麻痺の回復過程と予後の検証: 理学療法学Supplement 2010(0), CdPF2036-CdPF2036, 2011. 

 

まとめ

以上、
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こんにちは。イッコロといいます。 マイペースに勉強している運動器認定理学療法士です。 大阪府の病院で回復期の整形外科疾患と中枢神経疾患の理学療法を担当しています。