大腿骨頸部骨折と大腿骨転子部骨折は大腿骨の近位部の骨折ということで似ている部分がありますが、症状の現れ方や手術侵方法・侵襲が異なります。
そのため、それぞれの骨折の特徴を理解しておくことが大切です。
この記事では大腿骨転子部骨折の理学療法を展開するうえでのポイントとして、大腿骨転子部骨折の特徴と手術についてまとめています。
大腿骨頸部骨折の手術についてまとめた記事はコチラです。
大腿骨転子部骨折の特徴
大腿骨転子部骨折は関節包外骨折です。
骨頭への栄養血管が損傷されないため、大腿骨頸部骨折よりも骨頭壊死のリスクは低いです。
しかし、出血量が多いため大腿部に腫脹や皮下出血をきたすことがあり、疼痛も強いことがあります。
分類はEvans分類が用いられます。
Type1のgroup1と2は安定型、Type1のgroup3と4およびType2は不安定型です。
大腿骨転子部骨折の手術
安定型、不安定型に関わらず、手術療法が第一選択になります。
安定型であれば保存療法も可能ですが、変形治癒(大腿骨頸部の内反や後捻、脚短縮)のリスクが高いためです。
手術方法は以下の2つがあります。
- Sliding Hip Screw(SHS)
- Short Femoral Nail(γ‐nail)
手術侵襲に違いはありますが、どちらの方法でも術後の成績に有意差はないと報告されています。
【手術侵襲】
SHS…大腿筋膜、腸脛靭帯、外側広筋
γ‐nail…大腿筋膜、中殿筋、腸脛靭帯、外側広筋
どちらも整復と固定が十分であれば早期荷重が可能です。
術後のリスクとしては以下のものがあります。
- 偽関節(発生率:最大2.9%)
- カットアウト(発生率:約3%)
- 過度なテレスコーピング
- 再骨折
まとめ

大腿骨転子部骨折の特徴と手術についてまとめました。

参考文献
- 井上靖悟・他(2019)『エビデンスを参照した大腿骨近位部骨折患者に対する理学療法の考え方と進め方』理学療法36(1):11‐19,2019.
- 加藤浩・他(2018)『講座 理学療法に関するガイドラインupdate・3 大腿骨頸部骨折/転子部骨折』PTジャーナル52(6):561-573,2018.
- 医療情報科学研究所編(2017)『病気がみえる vol.11 運動器・整形外科 第1版』メディックメディア.
- 松本正知(2015)『骨折の機能解剖学的運動療法 その基礎から臨床まで 体幹・下肢』青木隆明・林典雄監修,中外医学社.
・SHSとγ‐nailでは術後成績に有意差はないものの、γ‐nailでは中殿筋が侵襲を受けること
これらが理学療法を進めるうえでのポイントとなります。