股関節屈曲ROMの制限因子をみつける評価の方法

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変形性股関節症や大腿骨近位部骨折、脊柱圧迫骨折の患者さんは股関節の屈曲ROM制限により動作が障害されます。

理学療法において、これらの疾患はメジャーであり股関節屈曲ROMの評価は必須です。

この記事は股関節屈曲ROMの制限因子をみつける評価の方法について書いています。

股関節屈曲は股関節だけのROMではない

股関節屈曲
参考可動域膝関節屈曲位:125°
   伸展位:70~80°
基本軸体幹と平行な線
移動軸大腿骨
(大転子と大腿骨外側顆を結ぶ線)

膝関節屈曲位での最終的な制限因子は大腿と腹部の軟部組織の接近です。
弾力性のある軟部組織が圧迫されるエンドフィールとなります。

膝関節伸展位ではハムストリングスの伸張が最終的な制限因子となります。

純粋な股関節の屈曲(寛骨大腿関節の屈曲)ROMは90°程度であり、残り35°の屈曲は他の運動によって生じます。

どこで生じるかというと骨盤の後傾(腰椎の屈曲)です。

そのため、股関節屈曲ROM制限を評価するには

  • 寛骨大腿関節の屈曲
  • 腰椎の屈曲

を評価する必要があります。

股関節屈曲ROMの評価

寛骨大腿関節と腰椎のROMを別々で評価すると制限因子を絞りやすいです。

まずは、骨盤を固定して寛骨大腿関節のROMを測定します。
90°未満であれば寛骨大腿関節に原因があります。

寛骨大腿関節の屈曲が90°以上でも総合的な股関節の屈曲(寛骨大腿関節と腰椎の屈曲)が125°以下であれば腰椎に原因があります。

寛骨大腿関節屈曲ROMの評価

股関節病変の有無をPatrickテストで評価します。

股関節屈曲時に鼠径部痛があるのなら、股関節前方にインピンジメントが生じている可能性があります。
前方インピンジメントテストで評価します。

【Patrickテスト】
検査側の股関節を屈曲・外転・外旋位として反対側の膝の上に乗せて、大腿を床方向に押します。
股関節に疼痛が生じれば陽性です。

【前方インピンジメントテスト】
股関節を屈曲・内転・内旋位にして関節前方のインピンジメントを誘発します。
鼡径部に疼痛が生じれば陽性であり、何らかの関節唇損傷が起こっている可能性が高いと考えられています。

 

膝関節伸展位で股関節屈曲ROMが40°以下ならハムストリングスの柔軟性低下が原因です。

膝関節伸展位で股関節屈曲が40°以上70°未満であればハムストリングスと薄筋の柔軟性低下が考えられます。
そして、股関節を内転しROMが大きくなれば薄筋が原因であり、変化がなければハムストリングスが原因であると判断します。

薄筋の股関節屈曲作用は股関節屈曲40°以上で伸展に切り替わります。

 

膝関節屈曲位で股関節屈曲ROMに制限があれば以下の筋の柔軟性低下が考えられます。

  • 股関節外転位で屈曲ROMがupするなら中殿筋後部繊維の柔軟性低下
  • 深屈曲域において、股関節外転位でROM up…大殿筋下部繊維
  • 深屈曲域において、股関節内転位でROM up…小殿筋と大腿筋膜張筋
  • 股関節内転位でROM up…短内転筋、長内転筋、大内転筋
  • 股関節屈曲60°以上の内旋位でROM up…梨状筋
  • 股関節内転、外旋位でROM up…大腿方形筋

・深屈曲域において、大殿筋下部繊維は外転作用、小殿筋と大腿筋膜張筋は内転作用となる
・短内転筋は股関節屈曲50°以上で、長内転筋は60°以上で伸展作用となる
・梨状筋は股関節屈曲60°以上で内旋作用となる
・梨状筋と大腿方形筋は股関節屈曲0°以上で伸展作用となる

大腿筋膜張筋はOberテスト、梨状筋は梨状筋テストで柔軟性低下を評価できます。

腰椎屈曲ROMの評価

腰椎の生理的な前弯は40~50°です。
腰椎の屈曲ROMは40~50°なので、最大に屈曲したときの腰椎は平坦化しています。

腰椎 前弯腰椎 後弯

 

 

 

 

 

 

腰椎の屈曲を制限する筋は

  • 広背筋
  • 胸最長筋
  • 腰腸肋筋
  • 腰多裂筋
  • 腰方形筋

があります。

肩伸展・内旋位で腰椎屈曲ROMがUpすれば、広背筋の柔軟性低下が考えられます。
胸椎伸展位でROMがUpすれば胸最長筋と腰腸肋筋の、検査側への腰椎側屈位でROMがUpすれば腰方形筋の柔軟性低下が考えられます。

そのほか、疼痛部位や圧痛、触診も行って制限因子を絞っていきます。

参考文献

  • D. A.Neumann(2012)『カラー版 筋骨格系のキネシオロジー 原著第2版』嶋田智明・他訳, 医歯薬出版.
  • A. I. KAPANDJI(2010)『カラー版 カパンジー 機能解剖学 Ⅱ.下肢 原著第6版』塩田悦治訳, 医歯薬出版.
  • 市橋則明編(2016)『理学療法評価学 障害別・関節別評価のポイントと実際』文光堂.
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ABOUTこの記事をかいた人

こんにちは。イッコロといいます。 マイペースに勉強している運動器認定理学療法士です。 大阪府の病院で回復期の整形外科疾患と中枢神経疾患の理学療法を担当しています。