上肢挙上の運動学と筋

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ADLにおいて、円滑に上肢挙上ができることは大切です。

 

しかし、職場によってはPTは下肢、OTは上肢と分けられていて上肢に理学療法を行う機会が少なく、肩甲帯の知識があいまいになってきているPTもいるのではないでしょうか?

さらに、肩甲帯の運動学や解剖学は複雑であるため勉強がなかなか進まないということもあると思います。

 

この記事では上肢挙上の運動学と筋についてまとめています。

肩甲帯の運動学と筋の知識を整理することができ、以前よりも上肢挙上に自信をもって理学療法を行うことができるようになります。

 

上肢挙上の運動学

肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節が2:1(肩甲上腕リズム)の割合で運動する必要があります。

 

上肢を180°挙上する際、肩甲上腕関節では屈曲・外転120°と外旋45°の運動が起こります。

肩甲胸郭関節では肩甲骨の上方回旋60°にくわえて、後傾20°外旋10°の運動が起こります。

 

肩甲胸郭関節が動くには胸鎖関節と肩鎖関節の運動が必要であり、上肢挙上180°のために鎖骨が25°挙上、15°後退、25°後方回旋します。

 

肩甲上腕関節で働く筋

肩関節の腱板筋が肩甲上腕関節の安定性に働きます。

 

運動性としては以下の筋が働きます。

  • 屈曲…三角筋前部繊維、烏口腕筋、上腕二頭筋
  • 外転…棘上筋、三角筋中部繊維
  • 外旋…棘下筋、小円筋、三角筋後部繊維
イッコロ
次は肩甲上腕関節の各筋の概要をみていきます。

 

三角筋

三角筋は前部、中部、後部繊維に分けられます。

支配神経はいずれも腋窩神経(C5-6)です。

 

三角筋前部繊維

  • 起始…鎖骨の外側1/3の前縁
  • 停止…三角筋粗面
  • 作用…上腕骨の屈曲、内旋

三角筋中部繊維

  • 起始…肩峰の外側縁
  • 停止…三角筋粗面
  • 作用…上腕骨の外転

三角筋後部繊維

  • 起始…肩甲棘の下縁
  • 停止…三角筋粗面
  • 作用…上腕骨の伸展、外旋

 

烏口腕筋

  • 起始…烏口突起
  • 停止…上腕骨骨幹部の中央内側
  • 支配神経…筋皮神経(C6-7)
  • 作用…上腕骨の屈曲

 

上腕二頭筋

上腕二頭筋には長頭と短頭があります。

どちらも支配神経と作用は同じです。

  • 支配神経…筋皮神経(C5-6)
  • 作用…上腕骨の屈曲、肘関節の屈曲、前腕の回外

 

上腕二頭筋長頭

  • 起始…肩甲骨の関節上結節、上方関節唇
  • 停止…橈骨粗面、前腕屈筋腱膜

結節間溝を通過する長頭腱は上腕骨頭を安定化する役割も担っています。

上腕二頭筋短頭

  • 起始…烏口突起
  • 停止…橈骨粗面、前腕屈筋腱膜

 

棘上筋

  • 起始…肩甲骨の棘上窩
  • 停止…上腕骨の大結節の上小面
  • 支配神経…肩甲上神経(C5-6)
  • 作用…上腕骨の外転

上肢挙上にともなって棘上筋は起始と停止が近づくため、挙上角度が大きくなるにつれて棘上筋の作用は減少します。

 

棘下筋

  • 起始…肩甲骨の棘下窩
  • 停止…上腕骨の大結節の後小面
  • 支配神経…肩甲上神経(C5-6)
  • 作用…上腕骨の外旋

棘下筋は上肢挙上にともなって起始と停止が離れるため、上肢挙上に応じて作用が増大します。

 

小円筋

  • 起始…肩甲骨の外側縁の近位2/3
  • 停止…上腕骨の大結節の下小面
  • 支配神経…腋窩神経(C5-6)
  • 作用…上腕骨の外旋

 

肩甲胸郭関節で働く筋

肩甲胸郭関節では以下の筋が働きます。

  • 上方回旋…前鋸筋下部繊維、僧帽筋上部繊維、僧帽筋下部繊維
  • 後傾…前鋸筋下部繊維、僧帽筋下部繊維
  • 外旋…前鋸筋、僧帽筋中部繊維
イッコロ
ここからは肩甲胸郭関節の各筋の概要をみていきます。

 

前鋸筋

前鋸筋には上部繊維と下部繊維があります。

どちらも支配神経は長胸神経(C5-7)です。

 

前鋸筋上部繊維

  • 起始…第1~2肋骨の側面
  • 停止…肩甲骨の肋骨面の上角
  • 作用…肩甲骨の外転、下方回旋、外旋
イッコロ
前鋸筋は肩甲骨を安定するために大切ですが、上部繊維は肩甲骨を下方回旋する作用をもっているため上肢挙上を阻害する可能性があります。

前鋸筋下部繊維

  • 起始…第3~9肋骨の側面
  • 停止…肩甲骨の肋骨面の内側縁~下角
  • 作用…肩甲骨の外転、上方回旋、後傾、外旋

 

僧帽筋

僧帽筋は上部、中部、下部繊維に分けられます。

いずれも支配神経は副神経・頚神経(C2-4)です。

 

僧帽筋上部繊維

  • 起始…外後頭隆起、項靭帯
  • 停止…鎖骨の外側の1/3後縁
  • 作用…肩甲骨の挙上、上方回旋

僧帽筋中部繊維

  • 起始…T1-6の棘突起
  • 停止…肩峰の内側、肩甲棘の上縁
  • 作用…肩甲骨の内転、上方回旋、外旋

僧帽筋下部繊維

  • 起始…T7-12の棘突起
  • 停止…肩甲骨の棘三角部
  • 作用…肩甲骨の下制、上方回旋、後傾
イッコロ
上肢挙上時に肩甲骨が過剰に挙上してしまう場合、僧帽筋下部繊維の機能が低下している可能性があります。

 

まとめ

上肢挙上の運動学と筋についてまとめました。

この記事が肩甲帯の運動学と筋の知識を整理に役立てれば幸いです。

 

参考文献

  • D.A.Neuman(2012)『カラー版 筋骨格系のキネシオロジー 原著第2版』嶋田智明・有馬慶美訳,医歯薬出版.
  • 林典雄(2005)『運動療法のための機能解剖学的触診技術-上肢』青木隆明監修,メジカルビュー.
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ABOUTこの記事をかいた人

こんにちは。イッコロといいます。 大阪府の理学療法士です。 病院で勤務しています。