膝OAの疼痛を軽減する理学療法~理学療法ガイドラインを中心に~

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変形性膝関節症(膝OA)の膝関節痛はADLを低下させる一因です。
なので、膝痛を軽減させることが大切になります。

膝OA(保存療法)の理学療法ガイドラインでは、運動療法や物理療法が推奨グレードAとされています。

どんな運動療法や物理療法が良いのか?
今回は理学療法ガイドラインと文献を中心に膝OAの疼痛を軽減する理学療法をまとめました!

 

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膝OAとは

慢性の関節炎を伴う関節構成要素の退行変性により関節が変形する疾患です。

発症メカニズム

  1. 軟骨に過剰な負担がかかり摩耗する
  2. 軟骨の分解物により滑膜が炎症を起こし疼痛が生じる
  3. これを繰り返して徐々に関節が変形する
 
軟骨に過剰な負荷がかかる原因
  • 肥満
  • 筋力低下により関節の安定を筋ではなく骨の支持への依存が大きくなること
  • 加齢による軟骨の変性で軟骨の衝撃吸収作用が低下すること
  • 骨折や靭帯損傷、半月板損傷などにより関節の安定化機構が破綻し関節が不安定になること

膝OAの重症度はK-L分類がよく使われます。

膝OAにおける膝痛の原因

  • 滑膜の炎症
  • 滑膜、半月板、軟骨下骨への刺激
  • 筋への刺激や筋スパズム

ポイントは変形が重度だからといって疼痛が強く生じるのではないということです。

関節の不安定性により関節構成体が過度に刺激されるため疼痛が生じます。

OAの重症度が高くても疼痛がない人もいますよね。
その人たちは関節が変形しきって逆に関節が安定しているので疼痛がないのです。

治療

保存療法と手術療法があります。

保存療法

  • 内服や外用薬の鎮痛剤を使う
  • 関節内にヒアルロン酸、ステロイドを注射する
  • 運動療法
  • 物理療法
  • 足底挿板療法
  • 装具療法

手術療法

  • 関節鏡手術
  • 高位脛骨骨切り
  • 人工関節置換術
 

理学療法士ができること

理学療法ガイドラインでは介入の推奨度がグレード(A~D)で示されています。

推奨グレードAは「行うように勧められる強い科学的根拠がある」
Bは「行うように勧められる科学的根拠がある」
C1は「行うように勧められる科学的根拠がない」
C2は「行わないように勧められる科学的根拠がない」
Dは「無個性や害を示す科学的根拠がある」

となっています。

推奨グレードAには

  • 患者教育と生活指導
  • 減量療法
  • 運動療法(筋力増強運動、有酸素運動、協調性運動)
  • 物理療法(超音波療法、温泉療法、TENS)
  • 物理療法の複合使用と運動療法との併用

があります。

推奨グレードBでは

  • 振動刺激療法
  • 徒手療法
  • 足底挿板療法
  • 装具療法
  • テーピング
  • 物理療法(水治療法、干渉波療法、電気刺激療法、レーザー療法)

が挙げられています。

この記事では推奨グレードAの介入を解説します。

エビデンスで注意すること

推奨グレードはエビデンスレベル(研究デザインをもとにその研究の科学的信頼性を判定したもの)を基礎としていますが、国の保険体系、関連学会などの推奨グレード、発行元の戦略も加味されています。

また、エビデンスは統計であるため、推奨グレードは全ての患者に適用となることを保証しているものではありません。

理学療法士も患者も誰一人として同じ人はいないので、全ての人に効果があるとは限らないということです。

 

患者教育と生活指導

  • 講義や討議形式の患者教育
  • 運動を含んだ自主練習、食事、膝日記(疼痛の有無や程度)などの生活指導
これらは疼痛の軽減、ADLとQOLの改善、自己効力感の向上などの効果があります。

疼痛がある人は安静が良いと自分で判断し廃用性の筋力低下を起こしがちなので、とくに自主練習の指導が大切だと感じます。

自主練習を指導する際はなぜ運動が良いのか患者さんにしっかり説明し、納得してもらわないとなかなか継続してくれないので説明能力が治療成績に影響します。

 
文献では運動療法の効果を持続させるには、運動の継続が重要であると示されています。
過去のRCTにおいて,90日間の運動介入の直後では有意だった疼痛軽減の効果が,運動介入を中止した3ヶ月後および9ヵ月後には消失していたことが報告されている.

活動に関しても同様に,60日にわたって運動を実施した介入群の効果は1年後に消失していたことが報告されている.

つまり,運動療法の持ち越し効果は乏しく,運動療法の中止には疼痛や活動に対する効果の消失というリスクがあるといえる.

これに関して本研究では,150日を超えた運動介入には疼痛や活動制限に対して有意な効果があるという証拠が示された.

田中, 小沢・他: 変形性膝関節症罹患者の機能障害,活動制限,健康関連QOL低下に対する運動療法は治療開始150日を超えても有効か?:ランダム化比較試験のシステマティックレビューおよびメタアナリシス: 理学療法学Supplement 2012(0), 48101086-48101086, 2013. 

 

減量療法

ダイエットです。

体重減少により、身体機能の改善、疼痛の軽減、移動能力、自己効力感の向上などの効果があります。

方法として食事指導や有酸素運動が挙げられます。

膝のROMが保たれているなら自転車エルゴメーターでの運動がオススメです。
膝に負担をかけることなく長時間の運動かつ膝ROM exが同時にできるので膝OAのダイエットにピッタリです。

 

運動療法

筋力増強運動、有酸素運動、協調性運動が推奨グレードAとなっています。

筋力増強運動

疼痛、ROM、筋力、歩行速度、6分間歩行、活動、WOMAC、SF-36、固有受容感覚を改善します。

僕は股関節伸展、外転、内転筋や大腿四頭筋の筋力増強訓運動をよく実施します。
とくに、股関節外転筋と大腿四頭筋の筋力増強によって疼痛や歩行能力が改善することを多く経験します。

文献でも大腿四頭筋の筋力増強運動により疼痛が軽減したことが示されています。

近年,大腿四頭筋筋力増強運動が有効であるとの報告が多数報告されてきたが,その運動では膝関節内反は改善しないとされている。

しかし本研究の運動療法では両膝間隙距離と下腿傾斜角の改善により膝関節内反が改善する可能性が示唆され,軽度から中等度の内側型膝OAに対して膝関節内反角度を軽減できる可能性を示唆した。

これにより運動力学的な機械的ストレスを減少し,疼痛が軽減したと推察された。

井上, 藤田・他: 変形性膝関節症(軽度~中等度)患者に対する運動療法の有効性:~機能改善と疼痛改善に着目して~: 理学療法学Supplement 2016(0), 0247, 2017 . 

膝OAの運動機能の向上を図るには股関節周囲筋に対する介入が必要であることが示唆されています。

股関節周囲筋の萎縮に関して,膝OA患者は両側罹患であることは多いが,本研究の結果より膝の内反角が大きい下肢では内反角が小さい下肢よりも中殿筋と大殿筋の筋萎縮が進行していることが明らかとなった。

以上から,膝OA患者やTKA術後の運動機能の向上を図っていくためには膝関節機能だけではなく,股関節周囲筋に対する評価や介入が必要であることが示唆された。

濱田, 南角・他: 変形性膝関節症患者の膝関節の内反アライメントと股関節周囲筋の関連性: 理学療法学Supplement 2015(0), 0010, 2016. 

疼痛軽減効果は非荷重位での筋力増強運動が効果が高いと言われています。

運動療法による疼痛軽減効果は,運動療法プログラムに荷重位筋力増強運動を含めないほうが大きいことが明らかにされた.

南有田, 田中・他: 変形性膝関節症罹患者の疼痛軽減効果に影響を及ぼす運動療法プログラムの要因は何か?:ランダム化比較試験のメタ回帰分析: 理学療法学Supplement 2012(0), 48101174-48101174, 2013. 

 

有酸素運動

疼痛、身体機能、立位や片脚立位での重心動揺の改善効果があります。

また、体重減少による肥満の改善で膝OAの進行予防や膝への荷重ストレス軽減が期待でき、持久力向上によって活動量が増えることで廃用予防や身体機能の向上が期待できると考えられます。

協調性運動

疼痛、膝関節伸展筋力、歩行能力(速度、時間)、階段昇降、WOMAC、SF-36、関節位置覚が向上します。

ガイドラインの参考文献では足部巧緻動作向上トレーニングがよく実施されています。

僕は膝痛の軽減を目的に起立ー着座やランジで股関節と足部を協調して使い、膝関節正中位で動作するといった協調性運動をしています。

物理療法

超音波療法、温泉療法、TENSが推奨グレードAです。

膝OAの疼痛に対する物理療法の使い分けには↓の文献が参考になります。

変形性関節症により膝関節に荷重痛を有する82名(男10名,女72名,平均年齢81.2±6.9歳,平均BMI23.3±3.7kg/m2)

運動痛を有する47名(男6名,女41名,平均年齢81.3±6.7歳,平均BMI22.7±3.3kg/m2)

TENSは周波数100Hz,パルス幅100μsecで設定し10分間.

US(超音波)は周波数1MHz,強度1.0~2.5W/cm2,照射時間率100%,照射面積は有効照射面積の2倍,ストローク法にて10分間.

荷重閾値の変化率は,他群と比べTENS群27.5±40.6%が有意に高値を示した(p<0.05).

ペインフルアーク値の変化率は,LS(レーザー)・HP(ホットパック)群に比べUS群14.0±15.8%,SW(超短波、コンデンサー法)群14.8±11.3%が有意に高値を示した(p<0.05).

膝関節においては,軟骨下骨への圧刺激による荷重痛には門制御理論効果,半月板や関節包への伸縮刺激による運動痛には深部への温熱作用が有効であると推察される.

宮原, 徳田・他: 変形性膝関節症の荷重痛・運動痛に対する物理療法モダリティの検討: 理学療法学 35(Supplement_2), 533, 2008-04-20

 

超音波療法

疼痛の軽減やROM、筋力、歩行速度、WOMACが向上する効果があります。

疼痛が生じている組織やメカニズムに応じて温熱作用と非温熱作用を使い分けましょう。

僕は↓の症例研究を参考にしています。

左膝OAを呈した70歳代女性

パルスUSは,周波数1.0 MHz,出力0.5 W/cm2,照射時間率20%,照射時間10分間,12回(3回/週),4週間の条件で実施した.

パルスUSにより,超音波評価装置を用いた評価での滑膜炎と関節水腫,疼痛,関節可動域,筋力,JKOMともに改善がみられた.

パルスUSは,滑膜炎および関節水腫が強くみられる初期膝OA患者の消炎鎮痛に対して有 効であることが示唆された.

大矢, 富田・他: 変形性膝関節症の膝の疼痛に対する パルス超音波療法を実施した一症例の検討 ─超音波評価装置を用いた病態評価に基づいて─: 理学療法科学 27(5), 603-608, 2012-10-20. 

 

温泉療法

温泉に入浴または飲用することで治療する医学的方法です。
疼痛、WOMAC、SF-36の改善効果があります。

TENS

鎮痛効果があります。

↓の文献はTENSの刺激強度について、主観的指標だけではなく生理学的指標からも報告しています。

〔対象〕健常者16人とした.

〔方法〕人為的な疼痛に対して周波数100 Hzでの 高強度(運動域値以上)TENSと低強度(感覚閾値レベル)TENS,およびTENSを一切実施しない条件(コントロー ル)を実施した.

各条件間での疼痛軽減効果を主観的指標であるNRSと,生理学的指標である前頭前皮質の脳血流 量および自律神経活動を用いて各条件間を比較した.

〔結果〕交感神経活動には明らかな違いが認められなかったが, NRSと前頭前皮質の脳血流量の結果では高強度TENSの疼痛軽減効果が最も高かった.

原, 吉田・他: 経皮的電気神経刺激(TENS)の 疼痛軽減効果に関する検討 ─生理学的指標およびTENSの刺激強度に着目して─: 理学療法科学 30(1), 63-68, 2015. 

 

物理療法の複合使用と運動療法との併用

理学療法ガイドラインで筋力トレーニング単体よりも経皮的電気刺激療法や超音波療法、ホットパックを併用した方が疼痛が優位に軽減するというデータが示されています。

物理療法の複合使用について、↓の文献では超音波と電気療法の併用が筋硬度と筋血流を改善することが報告されています。

対象は,
本研究の趣旨に同意の得られた健常成人43名(男性25名,女性18名,平均年齢22.6±5.0歳)

Combination刺激では,超音波設定を周波数3MHz,刺激強度1.0W/cm<SUP>2</SUP>とし,電気刺激は,周波数5MHz,刺激幅50μsecのburst mode TENSを使用して軽度の筋収縮が生じる強度にて5分間施行した.
US刺激では,周波数3MHz,強度1.0W/cm<SUP>2</SUP>にて,5分間施行した.

US刺激施行後の筋硬度11.6±4.0は,施行前17.9±5.0と比べ,有意に低値を示した(P<0.05).
Combination刺激施行後の筋硬度9.0±3.6は,施行前17.3±5.3と比べ,有意に低値を示した(P<0.05).
各刺激施行前の筋硬度に関して,US刺激施行側とCombination刺激施行側の間に有意な差を認めなかった.
各刺激施行後の筋硬度に関して,Combination刺激施行後では,US刺激施行後と比べ,有意に低値を示した(P<0.05).

US刺激施行後のVAS 3.8±1.6cmは,施行前4.9±1.8cmと比べ,有意に低値を示した(P<0.05).
Combination刺激施行後のVAS 3.1±1.8cmは,施行前4.8±1.8cmと比べ,有意に低値を示した(P<0.05).
各刺激施行前のVASに関して,US刺激施行側とCombination刺激施行側の間に有意な差を認めなかった.
各刺激施行後のVASに関して,US刺激施行側とCombination刺激施行側の間に有意な差を認めなかった.

大山, 竜田・他: 超音波刺激と電気刺激の併用が筋硬度に及ぼす影響: 理学療法学Supplement 2010(0), FcOF1113-FcOF1113, 2011. 

 

対象は,
本研究の趣旨に同意の得られた健常成人59名(男性42名,女性17名,年齢23.5±5.6歳)

無作為にCombi施行群(Co群)20名,US施行群(US群)20名,プラセボ群(P群)19名の3群に振り分けた.

刺激施行条件は,
Co群;US(周波数3MHz,出力強度1.0W/cm<sup>2</sup>,連続照射)とTENS(周波数5Hz,パルス幅50μsec,軽度の筋収縮が生じる強度)の同時施行.
US群;3MHz,1.0W/cm<sup>2</sup>の連続照射.
P群;照射強度無出力での導子操作.
各群ともLサイズ導子を用い,回転法にて5分間施行した.

oxy-Hb(酸素化ヘモグロビン量);Co群で,安静時に対して施行直後および15分後に有意に高値を示した(P<0.01).
US群で,安静時に対して施行直後に有意に高値を示した(P<0.05).
3群間の比較では,施行直後および15分後において,Co群はP群に対して有意に高値を示した.
total-Hb(全ヘモグロビン量);Co群で,安静時に対して施行直後および15分後に有意に高値を示した(P<0.05).
3群間で有意な差を認めなかった.

大山, 小川・他: 超音波刺激と電気刺激の併用が筋血行動態の改善および皮膚温の上昇に及ぼす影響: 理学療法学Supplement 2011(0), Fa0179-Fa0179, 2012. 

 

まとめ

膝OAの病態と推奨グレードAの理学療法介入を理学療法ガイドラインと文献を中心に解説しました。

この記事では膝OAについて骨や筋などの組織を中心に解説しましたが、これだけではなく、患者の社会的背景や心理面を包括した生物社会心理的モデルでとらえることが重要です。

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ABOUTこの記事をかいた人

こんにちは。イッコロといいます。 マイペースに勉強している運動器認定理学療法士です。 大阪府の病院で回復期の整形外科疾患と中枢神経疾患の理学療法を担当しています。