股関節に疼痛がある場合、関節にかかるストレスの軽減を図ります。
主には筋に対してアプローチするのですが、それだけでは十分に改善しない場合があります。
そんなときは単体の筋だけでなく、もう少し視野を広げて考える必要があります。
この記事では股関節の疼痛を考えるうえで大切な4つのキーワードについて書いています。
4つのキーワードを考慮することで、疼痛を単体の筋だけ考えるよりも幅のある理学療法評価とアプローチができるようになります。
関節内圧
関節には関節周囲の靭帯の緊張具合によってclose-packed positionとopen-packed positionがあります。

股関節のclose-packed positionは最大伸展+内旋です。
open-packed positionは屈曲30°+外転30°+軽度外旋です。
股関節の炎症による安静時痛があるときは、open-packed positionとなるようにポジショニングすると関節内圧が低下するので疼痛が軽減することがあります。
逆に、疼痛回避のためにopen-packed positionをとり続けているケースもあり、拘縮につながる可能性があるので注意が必要です。
このようなときは、股関節周囲筋の防御性収縮を軽減させるようなリラクゼーションやポジショニングを実施し、open-packed positionをとらなくても疼痛が生じないようにすることで拘縮の予防を図ります。
関節応力
関節には動作時の筋収縮や床反力などにより、体重以外にも力が加わります。
歩行の遊脚期の股関節応力は体重の13%ですが、立脚時には300%に達します。
さらに、走行や階段昇降や坂道では体重の500~600%もの応力が股関節にかかっています。
これらの運動で疼痛が増強するなら、運動にともなう筋収縮や床反力の影響が考えられます。

関節応力を軽減する他の方法としては、杖などで体重を免荷します。
杖の使用によって関節応力が約35%減少します。
腰椎骨盤リズム
股関節は寛骨に関節面を持つため、股関節と脊柱の運動は相互に影響を与え合います。
この関係を腰椎骨盤リズムといいます。
腰椎骨盤リズムには同側方向骨盤リズムと対側方向骨盤リズムがあります。
同側方向骨盤リズム
同側方向骨盤リズムの運動には、体幹屈曲動作や上肢リーチ動作などがあります。
たとえば、脊柱屈曲と骨盤後傾、股関節屈曲が同側方向に起こることで一つの運動部位にかかるストレスを分散したり、大きく運動することができます。
股関節運動と同じ方向へ脊柱の可動性を向上させることで股関節への負担を軽減できる可能性があります。
対側方向骨盤リズム
対側方向骨盤リズムは空間で体幹を固定しながら股関節を運動するときに起こります。
具体的には歩行などです。
立脚中期において、股関節は軽度内転して骨盤は対側が下制しています。
それによって生じた体幹の傾斜を修正するために脊柱は対側に側屈します。
つまり、歩行中も対側方向骨盤リズムによって運動中にも体幹をまっすぐに保持することができます。
立脚中期に体幹が対側に動揺しないのでモーメントアームが短くなり、股関節外転筋にかかる負荷が少なくなります。
このように、股関節運動と反対方向へ脊柱の可動性を向上させることで股関節への負担を軽減できる可能性があります。
hip-spine syndrome
股関節と脊柱のどちらかの運動が障害されると、もう一方にも障害が起こることがあります。

たとえば、腰痛や変形性脊椎症などにより脊柱の疼痛や拘縮が生じれば、これを補うために股関節が過剰に運動します。
その結果、股関節痛や変形性股関節症などが生じることがあります。
股関節病変の予防・改善のためには脊柱の機能にも注目する必要があります。
まとめ

股関節の疼痛を考えるうえで大切な4つのキーワードについて書きました。
単体の筋だけでなく、関節内圧、関節応力、腰椎骨盤リズム、hip-spine syndromeを考慮することで股関節痛に対する評価やアプローチの幅が広がります。