この記事では胸郭出口症候群の治療の概要と運動療法においてアプローチすべき筋を紹介しています。
胸郭出口症候群の病態や症状、整形外科的テストについてまとめた記事はコチラです。
Contents
胸郭出口症候群の治療
胸郭出口症候群には以下の治療が行われます。
- 運動療法
- 温熱療法
- 装具療法
- 薬物療法
- 手術療法

まずは運動療法以外について簡単に紹介します。
手術療法
重度の圧迫型や頚肋が適応となります。
頚肋とはC7から出た肋骨の一種です。人によって大きさや形状が異なります。
- 第1肋骨切除術
- 前斜角筋切除術
- 頚肋切除術
- 神経剥離切除術
があります。
薬物療法
NSAIDsや斜角筋ブロック注射などが行われます。
装具療法
胸郭出口を広くするために、肩甲骨挙上位を保持するKSバンドを装着します。
温熱療法
筋による腕神経叢の圧迫を軽減するために筋のリラクゼーション目的で実施します。
胸郭出口症候群の運動療法(リラクゼーションすべき筋)
胸郭出口を狭くして腕神経叢を絞扼する筋には以下のものがあります。
- 前斜角筋
- 中斜角筋
- 小胸筋
- 鎖骨下筋
これらの筋の柔軟性低下が胸郭出口症候群の原因になっている場合があります。
柔軟性の改善にはダイレクトストレッチやスタティックストレッチ、軽運動などでリラクゼーションを行います。

上記の筋の起始停止、作用を紹介します。
前斜角筋
- 起始…C3-6横突起の前結節
- 停止…第1肋骨の前斜角筋結節
- 作用…頸部の屈曲、同側への側屈
中斜角筋
- 起始…C2-7横突起の後結節
- 停止…第1肋骨の鎖骨下動脈溝の後方
- 作用…頸部の屈曲、同側への側屈
小胸筋
- 起始…第2-5肋骨の前面
- 停止…烏口突起
- 作用…肩甲骨の前傾、下方回旋
鎖骨下筋
- 起始…第1肋骨と第1肋軟骨の境界付近の前上面
- 停止…鎖骨下動脈溝
- 作用…鎖骨の下制
胸郭出口症候群の運動療法(トレーニングすべき筋)
胸郭出口症候群の姿勢の特徴には以下のものがあります。
- 上位頸椎の伸展、下位頸椎の屈曲(頭部前方突出、頸椎前弯の減少)
- 肩甲骨外転、前傾、下方回旋
- 胸椎の過剰な後弯
このような姿勢によって胸郭出口が狭くなったり、腕神経叢に牽引ストレスがかかったりするため胸郭出口症候群の改善には姿勢へのアプローチも必要です。
以下の筋のトレーニングによって姿勢の改善を図ります。
- 上位頸椎屈曲筋
- 下位頸椎伸展筋
- 僧帽筋上部~下部線維(肩甲骨の内転、上方回旋の作用)
- 胸部の脊柱起立筋

運動連鎖の観点から腰椎や下肢へアプローチすると効果的です。
まとめ

胸郭出口症候群の治療について、運動療法を中心に紹介しました。
筋のリラクゼーションやトレーニングで胸郭出口症候群を改善させていきましょう。
参考文献
- 医療情報科学研究所編(2017)『病気がみえる vol.11 運動器・整形外科 第1版』メディックメディア.
- 林典雄(2005)『運動療法のための機能解剖学的触診技術-上肢』青木隆明監修,メジカルビュー.
- D.A.Neumann(2012)『カラー版 筋骨格系のキネシオロジー 原著第2版』嶋田智明・有馬慶美訳,医歯薬出版.
- 整形外科リハビリテーション学会編著(2014)『改訂第2版 関節機能解剖学に基づく整形外科運動療法ナビゲーション-上肢・体幹』メジカルビュー.
- 工藤慎太郎編著(2017)『運動機能障害の「なぜ?」がわかる評価戦略』医学書院.