協調性とは
協調性とは運動を円滑・正確に実行する能力のことを指す。
協調的な運動には
- 活動する筋(どんな筋がどんな組み合わせで活動するか)
- 筋活動のタイミング(どんなタイミングで筋が活動するか)
- 筋収縮の強度(どれくらいの強さで筋が収縮するか)
- 筋収縮の速度(どれくらいの速さで筋が収縮するか)
- 筋収縮の様式(求心性、等尺性、遠心性のうち、どの筋収縮様式か)
これらが適切である必要がある。
では、どのようなプロセスで協調的な運動は実行されるのか?
協調的な運動のプロセス
随意運動は次のプロセスを経て実行される。
- 運動の動機の形成
- 運動方略の形成
- 運動プログラムの形成
- 運動の実行
- 運動を実行した結果のフィードバック
- フィードバックをもとにした運動方略~運動実行の修正
動機の形成には大脳辺縁系が関わる。
方略の形成には大脳連合野が関わる。
プログラムの形成には大脳の運動領野、基底核、小脳が関わる。
実行には脊髄、末梢神経、筋、骨関節が関わる。
フィードバックには末梢神経、脊髄、小脳、大脳の感覚野が関わる。
これらのプロセスが障害されると随意運動の協調性が低下する。
はかりごと。計略。手だて
一次運動野、運動前野、補足運動野など運動の企画、準備、実行において中心的な役割を果たす大脳皮質領域のこと
協調性障害の原因
協調性障害は上記の随意運動プロセスのどこに原因があるかを考えることが大切である。
たとえば、大脳運動領野の障害であれば適切な運動プログラムが形成できないため運動麻痺や筋緊張異常が生じ、これによって協調性が低下する。
骨関節に変形や不安定性などの障害があれば筋の張力を適切に伝達できないことにより協調性が低下する。
フィードバック系に障害があれば運動を適切に修正できないために協調性が低下する。
協調性障害には運動失調が含まれる。
運動失調とは
運動失調とは筋力低下や骨関節系以外に協調性低下の原因があるものを指す。
運動失調は次のものに分類できる。
- 小脳性運動失調
- 感覚性(脊髄性)運動失調
- 前庭性(迷路性)運動失調
- 大脳性(前頭葉性)運動失調
小脳性の運動失調は運動のフィードフォワードやフィードバックが機能しないことによって起こる。
感覚性の運動失調は主に脊髄後索の病変による深部感覚障害によって起こる。
前庭性の運動失調は三半規管や耳石器の病変による前庭機能障害によって起こる。
大脳性の運動失調は前頭葉、側頭葉、頭頂葉などの病変によって起こり、小脳性運動失調に似た協調性低下と精神機能の低下が起こる。
協調性障害、運動失調の症状
協調性障害の症状には次のものがある。
- 振戦
- 測定異常
- 反復拮抗運動不能
- 運動分解
- 時間測定障害
- 姿勢保持障害
- 起居動作・歩行障害
- 構音障害
動作の開始‐収量が遅延したり、動作が緩慢になること
まとめ

協調的な運動に必要な要素と運動プロセス、協調性障害の原因についてまとめた。
協調的な運動のプロセスを理解することが特に重要であり、これを理解することにより協調性障害の原因を捉えることができ、理学療法アプローチの組み立てに役立つと考える。
次回は協調性障害のアプローチについてまとめる。
参考文献
- 市橋則明編(2016)『理学療法評価学 障害別・関節別評価のポイントと実際』文光堂.
- 市橋則明編(2014)『運動療法学 第2版』文光堂.