【まとめ】Pusher現象

ピサの斜塔
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Pusher現象とは?

Pusher現象とは座位や立位で随意的に身体を麻痺側へ傾斜させ、姿勢を正中に修正しようとする介助に抵抗する現象です。

右半球損傷の症例に多いですが、左半球損傷の症例でもPusher現象は認められます。

Pusher現象には半側空間無視などの高次脳機能障害を合併することが多い印象がありますが、実はPusher現象の有無で高次脳機能障害を合併する割合に有意差はありません

Pusher現象に関わる脳領域

Pusher現象に関わる脳領域は

  • 視床の後外側部
  • 島葉の後部
  • 中心後回の皮質下
  • 下前頭回
  • 中側頭回
  • 下頭頂小葉
  • 頭頂葉皮質下

などです。

Pusher現象とSVV、SPVの関係

Pusher現象は垂直知覚の異常が原因であると推察されています。

垂直知覚には視覚的な垂直判断(subjective visual vertical;SVV)姿勢的な垂直判断(subjecive postural vertical:SPV)があります。

SVV(視覚的な垂直判断)の評価

SVVは暗室で光る棒などが垂直になったと判断した角度が実際の垂直線とどれくらい差があるかで評価します。

しかし、臨床現場においてはこのような評価環境を設定することは困難であるため、バケツを用いた方法で簡便に評価することができます

SVVの異常はPusher現象と関係があるものの、Pusher現象の評価バッテリーであるSCP(後述)とSVVに関する研究では、SCPのSVVの改善は相関せず、SCPの改善がSVVの改善よりも先行して起こることが報告されています。

さらに、Pusher現象が消失した症例でもSVVの異常が残存していることが明らかになっています。

SPV(姿勢的な垂直判断)の評価

SPVは前額面上で傾斜できる装置を使用し、姿勢が垂直になっと判断した角度と実際の垂直線の差を評価します。

半側空間無視と体性感覚障害はSPVに影響しそうな印象ですが、これらの障害の有無でSPVの異常の程度に差がなかったことから半側空間無視と体性感覚障害はSPVと直接的な関係はないことが示唆されています

Pusher現象の2つの評価バッテリー

望遠鏡を使っている人

Pusher現象の”有無”の評価にはClinical Assessment Scale for Contraversive Pushing(SCP)が用いられます。

各項目の点数>0の場合にPusher現象があると判定されます。

Pusher現象の”変化”を捉える評価にはBurke leteropulsion scale(BLS)が用いられます。

合計点>2の場合にPusher現象があると判断されます。

また、観察による評価ではleg orientationを確認します。

leg orientationは体幹を正中へ修正した際に非麻痺側の股関節が外旋する現象です。

Pusher現象の予後は?

Pusher現象は時間経過とともに消失していき、6週間後に約60%、3ヵ月後に約90%が消失します。

しかし、逆に言えばPusher現象の回復に時間を要するということであり、Pusher現象を有していると入院期間が延長します。

また、右半球損傷例は左半球損傷例と比較して回復が遅れる傾向があります。

Pusher現象に対する理学療法

Pusher現象に対する確立された理学療法はありません。

しかし、SPVに比べてSVVは比較的に保たれているため、視覚的な情報を利用して姿勢の崩れの修正を図る方法が推奨されています。

従来の一般的な理学療法としては

  • 垂直知覚の異常を理解させる
  • 垂直を視覚的にフィードバックする
  • 傾斜面上での座位練習
  • 垂直指標を提示した座位や起立練習
  • 長下肢装具を使用した立位や歩行練習

があります。

また、腹臥位をとることで緊張性迷路反射により非麻痺側の四肢と体幹の伸展筋群の過剰な筋緊張が軽減し、Pusher現象が改善することが報告されています(しかし、垂直性に関する内省への影響は少ない)。

ロコマットを使用して歩行訓練を行うことでBLSが改善したということも報告されています。

これは、歩行時の姿勢を強制的に正中へ修正し重力を感知させることにより、異常な垂直性の感覚を再調整するためと考察されています。

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