変形性股関節症の評価とリスク管理

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この記事は変形性股関節症の評価とリスク管理について書いています。

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画像から分かること

変形性関節症の進行に伴ってX-Pで以下の所見がみられます。

  1. 関節軟骨の摩耗
  2. 軟骨下骨の硬化
  3. ストレス集中部位の骨硬化、骨嚢胞、骨棘
  4. 骨頭と臼蓋の変形

これらの所見を確認することで疼痛やROM制限の原因を推定できます。

関節軟骨が摩耗している部位は症状の進行により疼痛が新たに生じることが予想されます。
軟骨下骨の効果や骨嚢胞、骨棘の部位は荷重や関節運動によって疼痛が生じていることが予想できます。
骨棘、骨頭と臼蓋の変形では骨性のROM制限が起こっていることが考えられます。

形態測定から分かること

Craigテストでは大腿骨の前捻角を知ることができます。
前捻角が大きい場合、体表からは大腿骨が回旋中間位に見えていても実際には大腿骨が内旋しているということが起こります。

下肢長は転子下長、棘果長、臍果長(さいかちょう)を測定します。

転子下長は大腿骨以遠、棘果長は臼蓋を含めた下肢長を知ることができます。
転子下長が同じでも棘果長に左右差がある場合、臼蓋~大転子の間に脚長差の原因があります。

臍果長は腰椎を含めた機能的脚長を知ることができます。
棘果長が同じでも臍果長に左右差がある場合、腰椎の回旋や側屈が脚長差の原因となっています。

下肢周径は腫脹や浮腫、筋委縮を知ることができます。

疼痛を評価する

関節性の疼痛は

  • 表面に露出しら軟骨下骨の刺激
  • 骨棘による関節唇や関節包、靭帯などへの刺激
  • 軟骨の摩耗粉による滑膜刺激
  • 骨髄の血流不全による充血
  • 関節内圧の上昇による関節包の刺激や大腿骨頭のうっ血

があります。

テストとしてはPatrickテスト(股関節と仙腸関節の病変)、Impingmentテスト(FAI、関節唇の損傷)などがあります。

筋性では筋の過剰緊張による筋や腱の循環不全があります。
筋の内圧を高めたときの疼痛(圧痛、収縮時痛、伸張時痛)を確認します。

神経性では閉鎖神経、大腿神経、坐骨神経由来の関連痛があります(膝関節や大腿部に多い)。
神経の支配領域と神経の圧迫や伸張時の疼痛を照らし合わせて評価します。

ROMを評価する

股関節の全方向のROM制限の有無を確認します。

画像やPatrickテスト、Impingmentテストなどからは関節性の原因を推定できます。
ThomasテストElyテストOberテスト、梨状筋テストなどからは筋性の原因を推定できます。

エンドフィールと上記から得られた情報を照らし合わせてROMの制限因子を絞ります。

神経を評価する

神経は圧迫や手術による直接損傷、セメントでの熱損傷、脚延長(2~3㎝)による伸張で障害が起こります。

閉鎖神経や大腿神経、坐骨神経に障害が起こりやすく、支配領域の感覚鈍麻や痺れ、筋力低下が生じます。

また、前方・前外側侵入では外側大腿皮神経が障害されることがあり、症状としては筋力低下は起こらず感覚障害が生じます。

筋力を評価する

筋力低下は以下の原因で起こります。

  • 関節の変形に伴う発揮筋力の低下
    変形によって筋の筋のモーメントアームの減少や筋長の短縮が起こり筋の収縮効率が低下します。
  • 筋委縮と筋の質的変化
    廃用性の筋委縮やTypeⅡ繊維の萎縮、脂肪浸潤が起こります。
  • その他の要因による筋力低下
    疼痛や腫脹による筋の収縮不全神経筋協調性低下(筋活動開始の遅れ、拮抗筋の過剰な同時活動など)、が起こります。体幹の固定機能低下による筋出力低下が起こります。

腸腰筋と大殿筋、中殿筋の筋力低下が生じていることが多いです。

筋力低下を起こしている原因と筋を評価して理学療法を行います。

他の身体部位の評価をする

股関節の変形は腰椎と膝関節に影響を及ぼします。

股関節の変形によりROM制限や下肢短縮が起こり、これを腰椎で代償することで腰椎に側弯などが生じます
逆に、腰椎の変形が股関節に影響をあたえることがあります。
たとえば、腰椎が後弯すると骨盤が後傾し、股関節の適合が低下し臼蓋と大腿骨頭の一部分に荷重ストレスが集中することになり、股関節変形の原因になります。
これらの関係をHip-spine syndromeといいます。

またROM制限や下肢短縮、跛行は膝関節の機械的ストレスを増加させ、膝関節に変形を生じさせます
股関節の変形この関係をCoxitis kneeといいます。

他にはROM制限や跛行は仙腸関節へのストレスを大きくするため、仙腸関節痛の原因になります。

動作を評価する

  • 靴下の着脱
  • 足趾の爪切り
  • 浴槽の跨ぎ
  • 階段昇降、バスの昇降
  • 床からの立ち上がり、座り込み

股関節屈曲、外転、外旋ROMや筋力低下により、これらの動作が障害されやすいです。

股関節の総合的な評価指標

国内では日本整形外科学会股関節機能判定基準(JOA hip score)、国際的にはHarris hip scoreが使用されています。

JOA hip scoreは疼痛、ROM、歩行、ADL能力で合計100点満点で評価します。

Harris hip scoreは疼痛、跛行、歩行補助具、歩行距離、座位、公共交通機関の利用、階段昇降、靴と靴下の着脱、ROM、下肢長を評価します。

リスク管理

脱臼の原因は次に挙げるものがあります。

  • 不良肢位
  • インプラントの設置不良
  • インプラント同士や骨同士の衝突
  • 筋力低下

後方侵入では屈曲・外転・内旋の複合運動で、前方侵入や前側方侵入では伸展・内転・外旋の複合運動で脱臼しやすいです。

後方侵入だからといって伸展・内転・外旋で脱臼しないというわけではありません。
上記の複合運動は侵入方法に関わらず脱臼する危険性があります。

脱臼しやすい動作は

  • 寝返り~起き上がり
  • 靴や靴下の着脱
  • 足部の洗体と爪切り
  • 低い洗体椅子や和式トイレへの座り込み
  • クロスステップ

などがあります。

参考文献

  • 吉尾雅春, 小柳磨毅編(2013)『標準理学療法学 専門分野 骨関節理学療法学』奈良勲監修, 医学書院.
  • 相澤純也, 中丸宏二編(2012)『ビジュアル実践リハ 整形外科リハビリテーション カラー写真でわかるリハの根拠と手技のコツ』神野哲也監修, 羊土社.
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ABOUTこの記事をかいた人

こんにちは。イッコロといいます。 マイペースに勉強している運動器認定理学療法士です。 大阪府の病院で回復期の整形外科疾患と中枢神経疾患の理学療法を担当しています。