『視床出血の予後について 入院時の意識レベルとCT所見の立場から』
この論文は山元氏らが執筆しており、視床出血者126例(内科的治療120例+外科的治療6例)の生命・機能予後について書かれています。
この記事では、内科的治療120例の機能予後についてまとめています。
Contents
対象
対象は視床出血者で内科的治療が行われた120例です。
平均年齢は64±10歳、平均入院日数は55日±94日となっています。
検討項目
機能予後(脳卒中の外科研究会の機能分類に準じる)に影響を及ぼす因子について、以下が検討されています。
- 入院時の意識レベル
- CT分類
- 血腫(血腫量、血種の最大径)
- 完全に社会復帰
- 自立生活が可能もしくは一部社会復帰が可能
- 日常生活が可能だが要介助
- 寝たきり
- 植物状態
- 死亡
入院時の意識レベル
脳卒中の外科研究会の神経学的分類に準じて分類されています。
- 清明あるいは錯乱
- 傾眠
- 昏迷
- 半昏睡
- 深昏睡
CT所見
発症48時間以内に施行されており、脳卒中の外科研究会の分類に準じて分類されています。
- Ia群…視床に限局 脳室穿破なし
- Ib群…視床に限局 脳室穿破あり
- IIa群…内包へ伸展 脳室穿破なし
- IIb群…内包へ伸展 脳室穿破あり
- IIIa群…視床下部または中脳に伸展 脳室穿破なし
- IIIb群…視床下部または中脳に伸展 脳室穿破あり
血腫量は、血種の最大横径×最大前後径×最大上下径×1/2にて算出されています。
結果

入院時意識レベル、CT分類、血種量、血種の最大径、脳室穿破、水頭症、発症時の年齢が機能予後に影響していました。
入院時意識が清明だと機能予後が良好
入院時意識レベルが清明なら74%(39例中29例)、傾眠なら34%(36例中12例)が社会復帰または自立生活が可能
昏迷なら6%(16例中1例)が自立生活が可能
血腫部位が視床に限局しているか、脳室穿破なしかがポイント
CT分類がIa群なら73%(36例中26例)が社会復帰または自立生活が可能
Ⅱa群なら43%(7例中3例)、IIIa群なら25%(4例中1例)が自立生活が可能
脳室穿破があると血腫が視床のみ(Ⅰb群)でも、社会復帰または自立生活が可能な者が29%(7例中2例)に低下してしまいます。
脳室穿破の有無は機能予後に有意に影響を及ぼす
脳室穿破ありの場合は17%(73例中12例)、脳室穿破なしの場合は64%(47例中30例)が社会復帰または自立生活が可能
血腫量は5mlがポイント
血腫量が5ml以下の場合は74%(42例中36例)、10ml以下の場合は27%(33例中9例)が社会復帰または自立生活が可能
20ml以上の場合は全例が介助生活以下のADL
血腫の最大径は20㎜がポイント
血腫の最大径が20㎜以下なら72%(29例中21例)、25㎜以下なら48%(27例中13例)、30㎜以下なら30%(27例中8例)が社会復帰または自立生活が可能
30㎜以上なら全例が介助生活以下のADL
水頭症の有無は機能予後に有意に影響を及ぼす
水頭症ありだと全例が介助生活以下のADL
水頭症なしだと41%(102例中41例)が社会復帰または自立生活が可能
発症時の年齢は60歳がポイント
生存者のうち、50歳以下なら80%(5例中4例)、60歳以下は54%(41例中22例)、70歳以下は31%(40例中12例)、80歳以下は15%(28例中4例)が社会復帰または自立生活が可能
80歳以上は全例が介助生活以下のADL
参考文献
- 山元敏正, et al. “視床出血の予後について.” 脳卒中 13.2 (1991): 99-106.