こんにちは。
悩める中堅PTのイッコロです。
今回は中心性脊髄損傷の復習です。
中心性脊髄損傷とは?症状と治療は?
それでは始めましょう。
中心性脊髄損傷とは?
脊髄損傷のうち、不全損傷に分類されます。
脊髄の中心部(灰白質~白質内側部)の損傷です。
C3~C4の損傷が最多と報告されています。
頚髄損傷が多く、受傷食後の下肢障害や膀胱直腸障害は速やかに軽減します。
しかし、上肢の運動障害と表在感覚障害を強く呈します。
一方、深部感覚は比較的に保たれます。
受傷機転
頸椎の過伸展によって脊髄の中心部が障害されます。
なぜ脊髄の中心部が障害されるかというと、頚髄の中心部が循環状態の抵抗減弱部位であるためです。

発症の基盤に頸椎症や頸椎後縦靭帯骨化症などによる脊柱管狭窄症がある場合が多いです。
症状
中心性脊髄損傷に特徴的な症状は以下の2つです。
- 上肢優位の運動障害
- 表在感覚優位の障害
さらに、他の脊髄損傷と同様に損傷レベルに応じて以下の症状を呈します。
- 脊髄ショック…受傷後24時間~6週間は損傷レベル以外の機能も低下するため
- 呼吸障害…横隔膜や腹斜筋など呼吸に関わる筋はL2以上の支配を受けるため
- 排尿・排便障害…仙髄、脳幹、大脳皮質に排尿中枢があるため
- 自律神経系の障害…交感神経がT1~L2由来、副交感神経が脳幹とS2~S4由来であるため、起立性低血圧、体温調節障害、自律神経過反射が起こる
なぜ、上肢の運動と表在感覚の障害が強いか
Foresterのラミネーション仮説では脊髄の神経路は以下のようになっています。

Schneiderもラミネーション仮説を支持しており、脊髄の中心部には上肢の運動や表在感覚を支配する神経路があるため、中心性脊髄損傷では上肢の運動障害と表在感覚の障害が強くなると考えられています。
合併症
その他の脊髄損傷と同じように以下の合併症があります。
- 褥瘡
- 異所性骨化
- 骨萎縮
脊髄に対する治療
保存療法と手術療法があります。
保存療法
脊椎不安定性が小さい骨傷がある場合は頭蓋牽引や反張位整復法により、転位や脱臼の整復を行ったあと装具により骨癒合を図ります。
骨傷がない場合は装具による局所安静が原則として行われます。
手術療法
脊髄の除圧のために行われます。
骨片・椎間板ヘルニア・血腫があれば摘出術が施工されます。
脊髄腫脹があれば椎弓切除術と脊椎固定術が施工されます。
不全麻痺は骨傷のない場合を除いてほぼ全ての症例で手術療法が適応となります。
しかし、完全麻痺では麻痺の改善が期待しがたいため、除圧術は行われず整復固定術のみ施行されます。
ただし、いずれの手術においても適応について明確な基準は確立されておらず、医師によって異なっているのが実情です。
まとめ

- 中心性脊髄損傷は脊髄中心部の損傷である
- 症状は上肢の運動と表在感覚の障害が優位である
- 骨傷がないor軽度な場合は装具による保存療法が適応となる
- 骨片、椎間板ヘルニア、血種がある場合は摘出術が施工される
- 脊髄腫脹がある場合は椎弓切除術と脊椎固定術が適応となる
- しかし、手術適応について明確な基準は確立されていない
参考文献
- 吉尾雅春・小柳磨毅編(2013)『標準理学療法学 専門分野 骨関節理学療法学』奈良勲監修, 医学書院.
- 医療情報科学研究所編(2018)『病気がみえる vol.11 運動器・整形外科 第1版』メディックメディア.
- 中村利孝ほか編(2011)『標準整形外科学 第11反』内田淳正監修, 医学書院.
- 林浩一, et al. “中心性頸髄損傷の病態と治療.” 千葉医学雑誌 86.5 (2010): 167-173.