超音波療法は使い方の簡便さ、適応の広さから理学療法ですごく重宝します。
なので、使い方と適応や禁忌を知って正しく実施できるだけで治療効果があがります。
「普段から使っているから使い方とか知ってるで!」という人が大多数だと思います。
しかし、超音波療法について最後に勉強したのはいつですか?
「国家試験で勉強したのが最後…」
という人も多いのではないでしょうか?
そんな人に向けて超音波療法についてまとめました!

Contents
超音波療法とは
超音波とは人間が聴くことができる最大周波数である20000Hzを超える音波です。
超音波療法は超音波で組織に振動エネルギーを与え、生体に様々な良い作用をもたらすことを期待します。
理学療法では温熱作用、非温熱作用が利用されます。
超音波療法が他よりも優れているところ
- 深部の組織にも効果が期待できる
- 金属部にも照射できる
たとえば、ホットパックは表層しか加温できず、極超短波は金属部では禁忌です。
なので、人工関節置換術後や骨接合術後の理学療法では大活躍です。
超音波治療機器の使い方
- プローブの選び方
- 周波数の選択
- Dutyの設定
- 超音波強度の設定
- プローブの当て方
- 治療時間
のステップで解説します。
プローブの選び方
超音波を照射する面積に応じてプローブ(治療導子=超音波が発生する金属の部分)のサイズを選択します。
選び方は単純で、広い範囲に照射したければ大きいプローブを使います。
周波数の選択
周波数は1MHzと3MHzを選ぶことができ、1MHzは皮下6~9cmの深部を、3MHzは皮下2~3cmの浅部に効果を与えることができます。
治療組織の皮下からの深さで設定しましょう。
Duty(%)の設定
Dutyとは照射時間率といい、超音波を照射している時間としていない時間の割合のことです。
たとえば、1秒間にずっと照射すればDutyは100%となり、1秒間に照射している時間が”合計”0.5秒であればDutyは50%となります。
照射時間が”合計”0.5秒と表現したのは、0.5秒間ずっと照射して0.5秒間ずっと休止しているのではなく、1秒間の間に小刻みに照射ー休止を繰り返してその照射時間の合計が0.5秒だからです。
温熱作用や慢性症状部位に効果を期待する場面はDutyを100%に、非温熱作用や急性症状部位に効果を期待する場面は50~5%に設定します。
超音波強度(W/cm2)の設定
数値が大きいほど単位面積あたりに与えられるエネルギーが大きくなります。
0.1~1.2W/cm2で治療することが多いです。
プローブの当て方や患者さんの不快刺激の有無などで設定します。
プローブの当て方
ポイントはプローブ全面を当てなくても良いということです。
全面を当てらてるならできるに超したことはないですが、手関節背屈筋群の近位付着部周辺など薄い組織に照射する場面、プローブ全面を筋に当てようとすると骨にも向かって照射することになり骨膜まで振動エネルギーが伝達してしまいます。
骨膜まで振動エネルギーが伝わると鈍痛が生じやすいため、治療ができないことがあります。
こんな時はプローブ全面を当てようとせず、骨に向かって照射せず筋だけに照射するようにプローブの端だけを筋を調整して当てます。
また、プローブの当て方には移動法と固定法、水中法、水袋法があります。
ここでは臨床でよく使われる移動法と固定法のみ紹介します。
移動法
プローブを回転や往復移動などをして照射します。
超音波強度は0.5~1.2W/㎝2で行います。
移動速度は2.5㎝/秒や4㎝/秒などが推奨されていますが、具体的なデータが示されているわけではありません。
そもそも、組織に与えらえるエネルギー(超音波強度と照射面積により決まる)に応じて移動速度は設定されるべきなので、患者さんに不快刺激を与えない移動速度で行うと良いです。
メリット
- 広い範囲に照射できる
- 疼痛が生じにくい
なぜ疼痛が生じにくいかというとビーム不均等率(beam non-unifotmy ratio; BNR)があるからです。
BNRとは最大強度/平均強度の比率のことで、BNR=1だとプローブ全面に均一な強度で超音波が発生しており、生体に均等な超音波を与えることができます。
しかし、BNRが大きいのにプローブを固定すると局所にエレベーターが集中し疼痛が生じる危険性が高くなります。
なので、プローブを移動させながら照射することで危険を避けることができるのです。
デメリット
- プローブを移動させているうちにいつの間にか治療部位から外れて治療してしまいやすい
- 有効照射面積(プローブの2倍の面積まで)以上の範囲を移動させてしまいやすい
固定法
その場でプローブを固定して照射します。
超音波強度は0.1~0.4W/㎝2で行います。
プローブを固定している分、移動法と比べてエネルギーが集中するので超音波強度は小さめです。
メリット
- 目的の組織を確実に照射できる
- エネルギーが分散しないので効率よく短時間で治療効果を得られる
- BNRが大きいと疼痛が生じやすい
BNRはプローブの性能次第なので使っている超音波機器の性能(市販の超音波機器のBNRは5前後)をチェックしましょう。
しかし、良い性能のプローブでも落としたりぶつけたりしているとプローブの表面が傷ついてBNRが大きくなってしまうことがあるので気を付けましょう。
治療時間
物理療法関係の文献では3~10分で治療しているものが多いです。
僕は普段は5分、十分な治療効果が得られなけらば徐々に時間を延長しています。
適応
超音波療法には3つの作用
- 温熱作用
- 非温熱作用
があります。
温熱作用の適応
組織の加温による循環改善やゲートコントロール理論、伸張性の増大が期待でき、以下の症状が適応となります。
- 神経痛
- 筋痛
- 関節拘縮
- 拘縮予防、癒着予防
- 浮腫
非温熱作用の適応
- 振動(マイクロマッサージ)による細胞膜の透過性や活性化
- キャビテーションによる組織液の運動の活発化
これらにより、以下のものに効果が期待されます。
- 関節拘縮
- 拘縮予防、癒着予防
- 骨成長促進
禁忌
- 成長期の骨端軟骨
- 合成樹脂やセメントが留置されている部位(人工関節や骨接合術後など)
- 良性、悪性腫瘍
- 脊髄疾患(多発性硬化症、脊髄灰白質炎、脊髄空洞症)
- 心臓、心臓ペースメーカー
- 生殖器官、内分泌器官
- 眼
成長期の骨端軟骨、合成樹脂やセメント留置部位が禁忌であることは忘れがちなので要注意です。
ただし、合成樹脂やセメント留置部位はDutyを50%以下で設定すれば照射可能とされています。
その他、温熱作用も期待する場合は温熱療法の禁忌にも注意です。
例を挙げると
- 急性炎症部位、炎症疾患
- 末梢循環障害
- 感覚障害部位
- 感染症や部位
などです。
超音波療法の使用例
温熱作用と非温熱作用の使用例として2つの症例を想定してみます。
症例1(温熱作用)
疾患:坐骨神経痛
病態:梨状筋の柔軟性低下により坐骨神経が絞扼され、下肢に放散痛が生じる。
治療方針:梨状筋の柔軟性改善を目的にダイレクトストレッチや軽運動によるリラクゼーションをトライするが疼痛が生じるため実施は困難である。
そこで、筋を圧迫、収縮、伸張せずに梨状筋の柔軟性改善を図る必要がある。
方法として温熱療法があるが、ホットパックでは深部組織である梨状筋は加温できない。
よって、深部まで加温できる超音波療法(温熱作用)を選択する。
設定:Dutyは100%、超音波強度は1.0W/cm2、移動法、治療時間は5分で実施する。
症例2(非温熱作用)
疾患:膝人工関節置換術後
病態:膝蓋下脂肪体の癒着による膝関節のROM制限が生じている。
治療方針:膝蓋下脂肪体の柔軟性改善を目的にマッサージを行うが深部までは十分にできていないようである。
超音波は金属部への照射は可能だが、人工関節に合成樹脂とセメントが留置されているため温熱作用は禁忌である。
したがって、非温熱での超音波療法を選択する。
設定:Dutyは50%、超音波強度は0.4W/cm2、固定法、治療時間は5分で実施する。
参考文献
- 網本和・菅原憲一編(2013)『標準理学療法 専門分野 物理療法学 第4版』奈良勲監修, 医学書院.
近視、白内障改善の超音波治療器がありますが、それは禁忌外医療器具になりますか?
こんばんは。
ブログで取り上げている超音波治療機器は理学療法で使用されるものであるため、目への使用は禁忌となります。
しかし、目に使うことを前提に製造されている超音波治療機器であれば、禁忌にならないはずです。
確定的な情報は使用を検討されている治療機器のメーカーにお尋ねしていただくことをオススメ致します。
大切なお体ですので…